一般家庭の屋外に設置した段差解消機と車いす

一般家庭の屋外に段差解消機を設置する3つのメリットと設置のポイント

「一般家庭の屋外に車いす用の昇降機を設置するにはどうすれば良いのかな?」

駅やデパートのような大きな公共施設では、車いすで段差を上り下りするのに昇降機を利用しているのを見かけませんか。
車いすを乗せて上下移動をする昇降機や、階段の角度に合わせて斜めに移動するものなど、様々な製品があります。

このような機器を自宅に設置できれば車いすの生活がもっと便利になるのに……そのように考える時があるかもしれません。

それらの昇降機の一つに「段差解消機」があります。
段差解消機は福祉用具に分類され、公共施設だけでなく、介護保険の適用を受けつつ既存の一般家庭に後付けして設置できます。

今回の記事では段差を上り下りする3つの方法を説明しつつ、段差解消機を設置するメリットや、設置に際するポイントについて紹介していきます。
このような方々向けの内容となっています。

  • 車いすを利用する生活を送っている方
  • 家庭に段差があり、上り下りする方法を探している方
  • 段差解消機の設置を検討されている方

車いすで段差を上り下りする3つの方法

車いすを利用して段差を上り下りするには、一般的に3種類の方法があります。

人力で持ち上げる

スロープや昇降機を利用せず、車いすのティッピングレバーを使い前輪を浮かして段差を乗り越えます。

ティッピングレバーとは車いすの後方にあるレバーで、介助者が踏み込むことで前輪が浮き、その状態で移動して段差を乗り越えます。
ティッピングレバーを使って前輪を持ち上げることで、1段の段差であれば安全に乗り越えられます。
しかし、段差が2つ以上続く状態で、段差を乗り越えた先に車いすを乗せるだけのスペースが無い、例えば階段状に続く場所ではティッピングレバーの使用は難しいです。

この場合、数人の介助者で車いすを持ち上げて移動しなければなりません。

健康で若い男性ならば、一人の力で介護者を簡単に持ち上げられると考えてしまうかもしれませんが、介護者の体重だけでなく、車いすの重量があります。
介護者が搭乗した車いすのバランスを取りつつ車いすを持ち上げ、段差を乗り越えていくのは困難なので、必ず複数の方で協力して行うようにして下さい。

持ち上げて移動しようとして足や手を滑らせてしまうと、車いすに搭乗する介護者が放り出されてしまい怪我をしたり、介助者が車いすの下敷きになってしまったり等、事故に繋がりかねません。

ちなみに、ティッピングレバーを使った段差の乗り越え方は、東京都のサイトで詳しく説明されていますので参考にして下さい。

スロープで移動する

車いすで段差を上り下りする一般的な方法として、スロープが思いつきませんか。
階段や段差の一端に適切なスロープが設置してあれば、介助者なしに乗り越えられるようになります。

スロープは建築基準法およびバリアフリー法の建築物移動等円滑化基準(最低限のレベル)と建築物移動等円滑化誘導基準(望ましいレベル)で、その設置について明記されています。

関係する法令勾配(傾斜角)
建築基準法(詳しい内容はこちら8分の1(7.1°)
建築物移動等円滑化基準(詳しい内容はこちら12分の1(4.8°)
建築物移動等円滑化誘導基準(詳しい内容はこちら)15分の1(3.8°)

介護者が自分の手で車いすを操作してスロープを乗り越えらえる角度は5°程度と言われており、それよりも大きな勾配になると介助者の手助けが必要になってきます。
角度が大きくなれば大きくなるほど車いすが勝手に動いてしまい事故に繋がる可能性が高まります。

段差解消機を利用する

車いすを昇降して段差を上り下りする福祉用具の一つに「段差解消機」があります。
段差解消機は設置方法や動力に違いがあるものの、障害者が搭乗している車いす自体を昇降させるので安全に移動できます。

車いすが乗る機械だから、業務用で使用されており、大型かつ価格が高いと考えてしまっているかもしれません。
もちろん、公共施設に設置する大型の昇降機もありますが、それとは別に、一般家庭に設置する段差解消機があります。

一般家庭向けの段差解消機は車いす1台が搭乗することを前提にしたサイズ感で、2mを超える段差を乗り越えられます。
仮に2mの段差を乗り越えようとすると、建築基準法に則ってスロープを設置すると16mの距離が必要になり、敷地面積が広い場所でしか設置できません。
しかし、段差解消機ならば機器を設置できる面積があれば十分なので、住宅地や繁華街のような広い敷地を用意できない場所でもバリアフリーな環境を提供できます。

段差解消機を屋外に設置する3つのメリット

怪我や事故の予防

建築基準法第22条に則り建てられた日本家屋では、地面からの湿気や設備の管理維持、ネズミの侵入を避ける為に、居室の床面が地面よりも45cm以上の高さとなるように定められています。

車いすを利用する方が外出するには段差を上り下りする必要があり、介助者が車いすを持ち上げたり角度のあるスロープで移動させたりすると、思わぬ不注意で車いすが暴走して転落したり、搭乗者が放り出されてしまったりする危険性があります。

段差解消機ならば車いすが機器に接したまま昇降するので暴走する危険性はありません。
もし車いすをロックし忘れてしまい不意に動いてしまっても、段差解消機から転落しないように転落防止用の仕組みが設けてあります。
段差解消機には利用者が安全に段差を乗り越えられる機能が揃っていますので、安心して利用できます。

介助者の負担軽減と介護者の自立

介護者が出かけるたびに介助者が補助する期間が長ければ長いほど、介助者には負担になりがちです。

もし一時的な介護であるならば、介助者が介護を目的に無理をしたり、多くの時間を割いたりしても支障がないかもしれません。
対して、終わりの見えない状態で介護を続けなければならない場合、介助者の身体的、心理的な負担が大きくなり、「介護疲れ」や思わぬ事故に繋がる可能性があります。

介護者からしても自分のできる範囲の行動を自分で行えば、介助者への負担を軽減できるとともに、身体的・心理的に健康な状態を保てます。
段差解消機には操作リモコンがついており、介護者自身が操作することで、介助者の手を借りずに段差を乗り越えられます。

繁華街や住宅地のような狭い敷地に取付けられる

建築基準法やバリアフリー法で説明した通り、車いすに搭乗する介護者自身がスロープを登ろうとすると、約5°の傾斜角が限界と言われています。

バリアフリー法における建築物移動等円滑化基準に相当する4.8°の傾斜でスロープを用意しようとすると、1mの段差を超えるのに12mの距離が必要になり、広い敷地面積が求められます。
繁華街や住宅地のように建物が密集する場所では、その敷地を用意するのも難しいかもしれません。
段差解消機ならば製品の設置面積があれば段差を乗り越えられるようになります。

「スペースが少なくてスロープを設置できないけれど、段差を乗り越えたい」
そのような悩みを抱えているのならば、段差解消機は解決策の一つになります。

段差解消機を屋外に設置する3つのポイント

浸水対策

段差解消機は乗り込み時の高さを無くす為に、地面を掘り込んだ箇所に設置する種類があります。

屋外では雨が降り、掘り込んだ箇所に流れ込むことで機器の内部に浸水してしまう可能性がでてきます。
設置の際、段差解消機の工事を専門としている方ならば雨水が抜けるように対策を打ってくれますので、設置経験のある施工業者を選ぶようにして下さい。

段差解消機を設置する箇所に行うピット工事の例

電源コンセント

段差解消機は電子制御によって動く機械なので、電源コンセントが近くに必要となります。

設置個所の近くにコンセントの差込口があるならばそれを流用するのも良いですが、もしも無いのならば電気工事を追加で実施してもらう必要があります。

屋外に設置したコンセント

レンタルとランニングコスト、メンテナンス

屋外での設置は雨や直射日光、木の葉や枯草といった障害物等、外的要因の影響を受けやすいです。
屋内と比べて過酷な環境なのは言うまでもなく、段差解消機を安定して動作させるには定期的なメンテナンスが欠かせません。

そうなると気になってしまうのは利用し続けることで発生するランニングコスト。
支払う費用が少なければ少ないほど嬉しいのは言うまでもありませんが、メンテナンスをせずに動いて欲しいときに動いてくれないのは困った状況になります。

段差解消機は介護保険に適用した製品のものがあり、福祉用具貸与事業者を通じてレンタルできます。
この場合、介護保険の適用となり、ご自身の状況によって異なりますが、自己負担は1~3割に留まります。
レンタルのプラン内容は事業者によって異なりますが、メンテナンスや保守サービスが含まれているのならば無償対応となり追加の費用が掛かりません。

段差解消機のレンタルについて興味のある方は、以下の記事で詳細に紹介していますので、良かったら参考にして下さい。

車いすで次のステップへと踏み出そう

日常生活を送っていると至る所にある段差や隙間。
自分の足で歩いている時には意識さえしないそれらは、車いすの方には高いハードルとなっています。
特にバリアフリーな環境が整っていない地域や建物の場合、車いすで出かけようとしても出かけられません。

今回の記事でメインとして紹介した段差解消機ならば、繁華街や密集した住宅地のようにスロープを設置することができない場所であったとしてもバリアフリー化が実現できます。
バリアフリーな環境を整えることで怪我や事故の予防、介助者の負担軽減と介護者の自立に繋がります。

段差解消機以外にも、ティッピングレバーやスロープにもメリットやデメリットがありますので、それらを適材適所に活用して、安全に、かつ快適に過ごして頂けたら幸いです。

最後になりますが、シンテックスが開発するタスカルシリーズの一つに、車いす向けの段差解消機「タスカルりふと」があります。

タスカルりふとは栃木県のとちぎサステナブル・フロンティア企業の認定を「介護保険対応車いす用段差解消リフト」にて受けた、介護保険に適用した福祉用具です(2024年3月現在)。

ショールームでの試乗体験や設置現場のお見積りを致しますので、介護保険に適用した段差解消機を検討している方や段差解消機を体験したい方は、弊社までご連絡頂けましたら幸いです。


なお、この記事にて掲載したスロープの傾斜角およびスロープの距離は、勾配に応じて弊社にて算出した計算値です。
正確な値につきましては関係法案の参照をお願い致します。

また記事の内容は2024年3月時点の情報に基づき、作成されています。
介護保険、福祉用具貸与については政治的・社会的事情により変化する場合がありますので、最新の情報は以下のサイトを参照下さい。