年齢を重ねていっても住み慣れた家、住み慣れた環境で暮らし続けたいというのは誰もが願うことだと思います。
「年を取ったらこの家は売って、マンションにするわ」と若い頃は考えていた方でも、実際に年を取った時に、「この土地から離れられない」「住み慣れたこの家に住み続けたい」と思う方が多いように感じます。
健康寿命と平均寿命の差は約10年
日常生活が制限されることなく生活できる期間を「健康寿命」と呼びます。
「健康寿命」と「平均寿命」の差は、厚生労働省の調査によると男女の差はあるものの、約10年間と言われています。
人生100年の昨今……
介護系の本を読んでみると、「介護が必要な期間は約10年と考えましょう」と書いてあります。
それは「健康寿命」と「平均寿命」の差が10年間あるからです。
健康寿命を延ばすことが一番大切な事ではあるのですが、介護が必要になってからの10年間をどこで暮らしていくのかということは、大変重要なことだと思います。
年を取っても、今の家で生活ができますでしょうか?
介護が必要になった原因の第4位は「骨折・転倒」
令和3年版高齢社会白書によると、介護が必要になった原因の第1位が「認知症」、第2位「脳卒中」、第3位「高齢による衰弱」に続き、第4位が「骨折・転倒」です。
しかもその「骨折・転倒」の起きている場所の7割近くが家の中で起きているということは有名な話です。
住環境を見直すことは、健康を維持すること
健康を維持するために、ご自宅の住環境の整備が大切であることがおわかりいただけましたでしょうか? そして、それはいつスタ―トをしたとしても決して遅くはないです。
では、具体的に家の中のどこをチェックすればよいのでしょうか?
家の中のチェックポイント
- 室内の段差の解消
わずかな段差でもつまずきの原因になります。和室の床面と洋室の床面の段差、敷居や襖のレールをフラットにすることができます。 - 床材
転倒防止のため滑りにくく、将来的に車いすでの移動を考えてある程度の強度と傷つきにくさが重要です。 - 手すりの取り付け
歩行動作を安定させ、立ち上がったり座ったりの動作をより安全にします。 - 建具の変更
開き戸は、開閉時に手を大きくのばす動作があるため、実はバランスを崩しやすいという難点があります。引き戸への変更が可能です。またドアノブは開く際に握力が必要になるため、レバー式などに変更ができます。 - 照明
家の中の暗い場所での転倒を防ぐために照明を明るくすることは有効ですが、まぶしすぎても眼精疲労につながるため注意が必要です。またスイッチの切り忘れ等があるので、センサー式の照明も便利です。 - 浴室
脱衣場から洗い場の床面の段差を解消するために、床面のかさ上げや、すのこ等を設置する方法があります。また、浴室内の立ち上がりや歩行補助のための手すりの設置。浴槽に安全に入るためのバスボードや移乗台などの設置をします。 - トイレ
便座への立ち座り動作を補助するためや、座位の姿勢の保持のための手すりの設置が必要になります。座る動作が困難な場合は便座の座面を高くすることもできます。 - 階段
転倒防止のための滑り止めを付けたり、足元が暗くならないよう照明も上下、中央3箇所に設置するのが良いです。利き手側に手すりを連続で取り付けるのがベストですが、上り下りが困難になってきた場合は、階段昇降機の導入も検討してはいかがでしょうか。
外出のためのチェックポイント
- 玄関かまち
玄関の上がりかまちの段差を小さくするために、土間に式台と言われる台の設置や、ステップと手すりがセットになった上がりかまち用の手すりがあります。また、椅子に座ったまま座面が自動で上下する昇降機もあります。 - 道路から玄関までの導線
日本の一般的な住宅は地面より45㎝以上玄関が上がっているため、道路から家の玄関までの階段には、角度が緩やかな場合はスロープなども有効です。ただし、角度が急な場合や、長い階段の場合は屋外用の階段昇降機も設置が可能です。介護保険のレンタルで車いす用のリフトを設置することもできます。
先の先まで考える
ここまで、ご自宅の住環境のチェックポイントを見てきましたが、一点だけ注意が必要なことがあります。
介護というのは、身体の状態が一時的に良くなることがあっても、完全に回復するということはないということです。
今はどんなに「大丈夫!」と思っていても、突然の入院や事故によって介護度が進んでしまうことや、進行性の病気により徐々に身体の機能が落ちてしまうなどは避けられません。
重要なのは一歩先、三歩先を考えてご自宅を見直すことだと思います。