「家族に車いすの方がいるけれど、玄関から外に出る段差を超えるのが大変で。だからといってスロープを取り付ける広さもなくて……」
日々過ごしてきた自宅の中や出先にある段差。
段差は室内に雨や埃が入らないように設けられたり、建物の景観や雰囲気といったデザイン性で取り入れられたりと、身近にあふれています。
健康な体ならば意識せずに乗り越えてしまいますが、足や腰が自由に動かなくなってしまったり、車いすでの生活が余儀なくされると大きな障害となります。
その障害を乗り越える一つの手段として、段差解消機という福祉機器を紹介します。
この記事は以下のような方向けの内容となっています。
- 車いすを利用している方、または介助している方
- 「段差」によって外に出られない方
- 段差解消機を知らない方
段差解消機とは?
段差解消機とは、その名前の通り段差を解消することを目的とした福祉機器です。
玄関口や乗り物の昇降場など、車いすに乗車したままでは乗り越えられない段差がある場所に段差解消機を設置して、車いすごと上下に昇降することで段差を乗り越えます。
車いすに乗ったまま機器を操作できるので、移動の度に車いすから乗り降りする必要もありません。
「段差ができないように機器を止めなきゃいけないのだから、操作は難しいんでしょ?」と感じているかもしれませんがご安心を。
段差解消機は福祉機器に分類され、どのような方でもラクラクに操作できます。
設置の際に設定した高さで自動的に止まる仕組みを採用しているので、リモコンを操作する時は「上がる」と「下がる」のボタンを押しっぱなしにするだけで大丈夫です。
段差解消機の役割について
福祉機器である段差解消機は障害者を含む体が不自由な方や高齢者、そのような方々を介助する方が使用します。
もし、何かしらの事情で車いすでの行動を余儀なくされてしまった場合、生活環境を見直さざるを得ません。
日本の建築基準法第22条によると、湿気対策や設備の維持管理、ネズミの侵入を防ぐ目的で、居室の床面の高さは地面から45cm以上にすると定められています。
この法令にも例外事項があり、それを満たす場合に限りバリアフリーな建築が認められています。
街全体がバリアフリー化に取り組んでいる地域で、段差の少ない住居に移住できれば問題を解決できますが、今の住まいや土地から離れられない事情のある方や、そもそも段差を障害になる期間が一時的なものに過ぎない方もいるでしょう。
怪我や病気により一時的に車いすを利用するだけならば、乗り越えられない段差があった時だけ介助者の方に手伝ってもらえば済むかもしれません。
または段差のない範囲で過ごすという選択も取れます。
一時的な期間であればこのような方法を行うのも良いですが、その時間が長く続くのならば、車いすを利用する本人、介助する方にとって大きな負担となってしまうのは言うまでもありません。
数段の階段を降りようとしても、車いすが思わず動いてしまわないように気を配ったり、複数人の方に車いすを支えてもらったりする必要があります。
加えて、介助者の手や足を挟み込まないように注意しなければなりません。
段差解消機ならば車いすを押して、そのまま機器に搭乗できますし、さらに介助者がいなくても車いすの利用者自身が機器に乗り込んで操作できるので、安心して段差を乗り越えることができます。
段差にスロープを設置するのは?
バリアフリー化が求められる昨今、段差といえばスロープが真っ先に思い付くかもしれません。
もちろん、段差という障害を克服する手段として、スロープは身近な存在であり、適切な解決方法です。
では、ここで問題です。
スロープを取り付けるのに必要な距離は、段差の高さの何倍になるでしょうか?
私たちの調査結果では、スロープの距離は段差の高さの約12倍が必要になる結果が出ています。
100mmの段差を乗り越えるのに、1.2mの距離が求められるので、既成の住居や建物が密集した場所にスロープを後付けするのは難しいと、多くの方々から意見を頂いています。
段差解消機を設置できる場所は?
「小型のエレベーターのようなものだから、公共施設にとりつけるのかな」と考えていませんか?
店舗や乗り物の昇降場といった公共施設に段差解消機を設置していますが、それ以上に一般家庭に設置し、日常生活を通して使ってもらっています。
段差解消機は福祉機器であり、中には介護保険に対応する製品があります。
例えば「タスカルりふと」は、介護保険適用の製品として、栃木県のとちぎサステナブル・フロンティア企業の認定を受けています(2023年11月現在)。
設置できる場所は屋内・屋外の双方に対応しています。
動かすのに必要な電気はご家庭で使用している100V電源なので、特別な電気工事を行わずに設置して直ぐに利用を開始できます。
段差を超えた先にある日常生活へ
自宅の中や公共施設の至る所にある段差。
健康な体ならば気にせず乗り越えている段差は、体が不自由な方や車いすの利用者にとっては大きな障害です。
その障害を解決する方法の一つとして、段差解消機を紹介しました。
段差解消機を利用することで介助者の方に補助を受けずとも、車いすの利用者本人が段差解消機に乗り込んで段差を乗り越えることができるようになります。
日常生活が段差によって制約を受けていると感じているならば、生活スタイルに少しだけ変化を取り入れてみませんか。